クロメート処理(化成被膜処理)について
クロメート処理は化成処理被膜の一種で、亜鉛めっきや亜鉛合金めっき、アルミニウム合金材料の表面を保護するために行われる化成処理です。
日本アートでは、6価クロメート及び3価化成被膜処理(3価クロメート)それぞれユニクロ・有色・黒色の計6種類を取りそろえております。

(左:ユニクロ|中央:有色|右:亜鉛黒)

(左:3価ユニクロ|中央:3価有色|右:三価亜鉛黒)
鉄鋼製品に亜鉛めっきをすると、鉄が赤くサビる(腐食する)のを防ぐ犠牲防食効果を付与することができます。この犠牲防食効果は、両性金属である亜鉛がもつ非常に腐食しやすい性質によるものです。亜鉛めっきを行っただけでは白錆と呼ばれる亜鉛の腐蝕生成物がすぐに発生してしまうため、各種クロメート処理を行うことで亜鉛自体の腐食(白錆)防止を図ることができます。
クロメート処理には、光沢クロメート、有色クロメート、黒色クロメートなど色の種類がありますが、有色クロメートが最も多く使われています。
各種化成処理被膜の名称と色について
化成被膜種 | 色調名称 | 色調 |
6価クロム化成処理(クロメート) | 光沢クロメート (ユニクロ・白色・ZnW・CM1) | 薄い青色光沢 |
6価クロム化成処理(クロメート) | 有色クロメート (有色・黄色・ZnY・CM2) | 黄色~赤色の干渉色(虹色) |
6価クロム化成処理(クロメート) | 黒色クロメート (亜鉛黒・ZnB) | 黒色(時間経過で変色有) |
3価クロム化成処理(クロメート代替) ※3価クロメート(RoHS・REACH対応) | 3価光沢クロメート (3価ユニクロ・3価白・Zn3W) | 銀色、青白色光沢または淡黄色 |
3価クロム化成処理(クロメート代替) ※3価クロメート(RoHS・REACH対応) | 3価クロメート (3価有色・Zn3Y) | 青色~黄色~赤橙色の干渉色 |
3価クロム化成処理(クロメート代替) ※3価クロメート(RoHS・REACH対応) | 3価黒色クロメート (3価黒・Zn3B) | マットな黒色 |
耐食性について
各種クロメートは、鉄鋼材に対して犠牲防食機能を持つ両性金属の亜鉛が白錆になるのを防ぐ(防食)目的で行われるものでその防食性能は以下の通りです。
中性塩水噴霧によるクロメートの耐食性比較(膜厚5~10μ)
色調名称 | 白錆発生までの時間(h) | 赤錆発生までの時間(h) |
ZnW(ユニクロ・青白) | 24~72時間程度 | 300時間以上 |
ZnY(有色・虹色) | 96~150時間程度 | 500時間以上 |
ZnB(亜鉛黒) | 96~150時間程度 | 480時間以上 |
Zn3W(3価ユニクロ・青白) | 72~120時間程度 | 300時間以上 |
Zn3Y(3価有色・虹色) | 120~240時間程度 | 500時間以上 |
Zn3B(3価亜鉛黒) | 120~168時間程度 | 480時間以上 |
JISによる耐食性の規格
クロメート皮膜の耐食性
等級 | 種類 | 等級、種類の記号 | 色合(参考) | 白錆が発生してはならない最低時間(h) |
1級 | 光沢 | CM1A | 透明、時として青味 | 6 |
1級 | 淡黄色 | CM1B | わずかに干渉模様 | 24 |
2級 | 黄色 | CM2C | 黄色干渉模様 | 72 |
2級 | 緑色 | CM2D | オリーブ、グリーン、 ブロンズ、褐色 | 96 |
白錆びについて
日本アートでは6価及び3価のクロム化成処理被膜の耐食性と仕上がりの美観には特に力を入れております。
「日本アートさんでクロメートをして在庫に置いておけばいつまでも新品同様だから亜鉛めっき品は錆びないものだ」という誤った認識を持たれている方が多数いらっしゃいますが、クロメートをしておけば絶対に錆びないというものではありません。
まず、亜鉛めっきとは、亜鉛めっき自身が白錆びとなることで鉄を赤錆から守ることを目的として行われる「犠牲防食めっき」です。この犠牲防食機能は亜鉛めっき直後から発揮さるため、亜鉛めっき後に白錆びが発生するのを一定期間防いで白錆び発生までの時間を延ばす目的で行われるのがクロメートです。
最近、在庫に置くなどしていた亜鉛めっき製品に白錆が発生しているのを発見して「めっきをしたのに白く錆びたのはめっきの不良だからやり直せ」と誤った過要求をされる事案が散見されますが、白錆びが発生するのは亜鉛めっきの犠牲防食機能がきちんと発揮された結果なのでめっきの不良ではありません。
亜鉛めっきでの「めっき不良」とは「(亜鉛めっきが付きまわる範囲で)素材に問題がないのに、亜鉛めっき被膜と鉄素地の間で膨れやめくれが生じるなどしてめっきの密着が確保できておらず素材に赤錆びを発生させ得る場合」の事です。
被膜特性について
被膜特性比較
被膜性能 | 6価クロム化成被膜(クロメート) | 3価クロム化成被膜(3価クロメート) |
一般耐食性(塩水噴霧) | 白錆発生まで150h | 白錆発生まで240h |
耐熱衝撃性 | 弱い | 強い |
加熱後の耐食性 | 白錆発生まで24h | 白錆発生まで192h |
被膜硬さ | やわらかく傷がつきやすい 約60~90HV(亜鉛に依存) | やわらかく傷がつきやすい 約60~90HV(亜鉛に依存) |
摩擦係数(ジンケート浴) | 0.46 | 0.50 |
被膜厚さ | 0.3µ程度 | 0.1µ程度 |
自己修復機能 | 有 | 無 |
クロメートの自己修復性について
クロメートには、6価クロム酸を主成分とする「6価クロメート」と3価クロム酸を主成分とする「3価クロメート」があるわけですが、6価クロメート皮膜には自己修復性があるので傷が付いても6価クロメート皮膜中のクロムが溶出して酸化被膜が修復されます。

一方、3価クロメートには6価クロメートのような自己修復性はありませんが、耐食性、装飾性、熱衝撃性、塗装密着性に優れており、3価クロム酸を主体とし6価クロム酸を一切使用しないので環境負荷や毒性の観点から自動車の外装部品や電子部品の筐体など幅広く採用されています。
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